店舗デザインのデザイン性と機能性の両立へのプロセス
店舗デザインはインテリアだけではなく、什器や設備の設置まで含みます。また進捗管理も大切な仕事です。デザイン性は最終的なパッケージであり、その土台になるのは使いやすさや導線などの生活のしやすさが最も大切な要素になります。
店舗デザインをおしゃれなイメージにしたいと考えて、内装をセンス良くまとめて集客化に繋げたいと考えることが通常の運営です。しかしおしゃれなだけでは使い勝手が良くありません。
窓から差し込む西日が眩し過ぎたり、レジでお金を支払おうとしたら他のお客さんに邪険にされるなど、そういったことを未然に防ぐ構造的な導線を考えることも店舗デザインの要諦なのです。試案を考えてから顧客サイドに立ってみて、使い勝手のイメージを膨らませて修正することも重要になります。
店舗デザインの役割や目的を考える
店舗デザインの概念は、単にインテリアのデザインだけではありません。近年の概念で言えば、ユニバーサルデザインやインターフェイスデザインを含んでいなければなりません。これはたとえば初めて行った場所でも、ストレスなくサービスを享受出来ることです。
また足が悪い人や日本語が読めない人でも利用出来るように、手摺が付けられていたり文章ではなくイラストで説明されていれば親切になります。店舗デザインだって、このような配慮がなければなりません。
店舗デザインは業種やサービスの提供により変化をしますので、まずはその店で提供する商品に関して考えてみることが重要です。たとえば手作りのパン屋さんならば、外側は清潔感があり外光を採り入れられるガラス窓を設置します。
直射日光が入らないように、日除けシェードを設置して商品であるパンの保存状態を守るのです。 お店の壁際にパンを置く什器を設置して、中央部にさらに台を置けば導線を進めばセルフサービスでパンが選べるようになります。
温度管理にシビアな製品の場合には、ショーケースを用意して店員に取ってもらえるようにすればいいのです。こうした設備の組み合わせや設置を考えて、場合によっては厨房まで請け負うのが店舗デザインの仕事になります。
この例で言えばパン屋さんなのでパンを清潔に安全に並べて選んでもらうことや、美味しく見えるような照明なども重視しなければなりません。生クリームなどを使った商品は、温度管理のショーケースを使って保管します。こうした導線を作ることが店舗デザインに求められる要素です。
お店のコンセプトやサービスの流れをデザイン
店舗デザインは空間を作るだけではありません。必要ならば壁を作り部屋を遮断することもあります。こういった内装の構造的なデザインは好き勝手ではなく、建築基準法や消防を順守して行わなければなりません。
雑居ビルなどの出入り口に乏しい建物では、非常口などの確保や消火設備の設置だって重要な要素です。 店舗デザインはお店のサービスにより、空間ごとサービスに合わせて作り変えてゆきます。
たとえば全身オイルマッサージの美容エステ店ならば、顧客は全裸になって専用の紙で出来た下着を身に着けて施術を受けるのです。プライバシーに配慮するために外部とは空間を区切りますし、全裸や全裸に近い姿でいる関係上、冷暖房もシビアにコントロールしなければなりません。
お店側ではオイルを使うためにタオルのストックを常にしておくこと、施術に使うベッドのスペースや美容器具を複数置けるスペースなどの確保が必要です。店舗デザインに求められるのは、プライバシーの確保がまず必要になります。
そして施術がしやすい環境を両立させなければなりません。 場合によっては美容エステなので、強い光を使った脱毛やターンオーバーの促進などのメニューも行います。その場合には専用の機器を使い、部屋の電気を薄暗くするので照明も配慮しなければなりません。
こうして目的やそのお店で行われるサービスをヒアリングして、理想の空間や機能を実現させるアプローチ手段を考えてゆくことも店舗デザインの重要な役割になります。ロゴのデザインや室内の装飾性だけではなく、機能的な部分まで組み込んでトータル設計を行うのです。
店舗デザインの成功例を参考に設計
世の中には数多くの数え切れないお店があり、それぞれ扱っている商品は異なります。店舗の内装デザインも異なれば、立地条件や敷地面積だって基本的に二つと同じ物はありません。
制限と制約の中で最大限のパフォーマンスと、顧客の要望を実現して提案することも店舗デザインの仕事です。 自分の経験則だけではなく、自分が気に入っている他社が設計した店舗デザインを常にストックしておくことだって、仕事をする上での財産になります。
仕事の依頼の段階でデザインをする時には、サンプルとして顧客に開示して提案をすることも出来るのです。良い部分は真似をして改良点や応用が出来ないか思案して、デザインの中に組み込んでゆきます。
デザインは学ぶことや真似ることが重要であり、そのままコピーするのではなく自分のオリジナリティや、そのお店で必要になる要素を足し算したり引き算することで、より精度を高めて完成に近付けてゆくのです。
話題のお店はアンテナを張っておき、近くに行ったら利用してみるのもいいでしょう。写真撮影が可能ならば、他の人のプライバシーに気を付けながら撮影をしておきます。
店舗の全体でなくても、気になる処理などを見つけたら撮影しておけば参考になるのです。こうしたことが難しいのならば、簡単に模写してスケッチにしてバインダーにまとめておくだけでも、デザインソースになります。
店舗デザインの仕事は常に勉強です。提案を行ったり、現場で指示を出す時にもイメージを伝えるために、サンプルを持っておく方が有利になります。
コンセプトに対してのサンプルプランを提案
デザインにおけるコンセプトやテーマは、完成品をより良い物に導くためのヒントになります。デザインへのアプローチは人それぞれであり、直感的に物事を進めて行く人や作っては壊してを繰り返して、最終的なプランを固める人もいるのです。
直感タイプは天才肌を言われますが、デザインのイメージを具現化するまでは思考と行動を両輪にして頭を悩ませています。生みの苦しみという言葉は、すべてのクリエイター職に通じる要素なのです。
仕事をする上で得意分野を持っていることも重要ですし、自分の引き出しを複数持っていれば顧客の発注に応えることが出来ます。顧客によってはパターンを少なくとも二つ以上提出することをリクエストされる場合もありますし、自分が好きなデザインではなく顧客の望むデザインを実現することが店舗デザインの仕事です。
趣味が合う発注者ばかりではなく、時には正反対な仕事を任されることだってあります。 コンセプトやテーマを決めて、完成品に向けた制作ルーチンや理論を組み立てることも重要です。
言語化することによりコンセプトは強化されますし、依頼主へデザインの背景を説明したり、施工業者にポイントを説明する時にだってこの理論は役立つことになります。説明が下手で頭に描いていたプラント乖離してしまっては、後でトラブルになる可能性だってあるのです。
だからプランを上手にアウトプットすることだって、仕事の中では重要な要素のスキルになります。それ以上にヒアリング力は重要であり、顧客の意図を汲み取ってデザインを提案することがこの仕事の最初のハードルになるのです。店舗デザインで必要なことは多岐になります。顧客へのヒアリング力と、プランを元にしたプレゼン力は言うまでもありません。
さらに各種の関係先との人間関係は、仕事を進める上で絶対に無視出来ない能力です。平面的なデザインを立体化する空間認識能力や、導線を考える力だって不可欠になります。こうした全ての能力が組み合わさり、店舗デザインは仕事として成立するのです。